【米ドル・香港ドル】ペッグ制が廃止されたらどうなる?サヤ取りポジションを考える

FX

相関性が高い通貨を利用したFX手法「香港ドル・米ドルのスワップポイントサヤ取り」について、今回はもっと深く考察します。

香港ドルは、30年以上に渡って米ドルとのペッグ制を採っており、「1米ドル=7.75〜7.85香港ドル」になるよう調整されている通貨です。

  • ペッグ制ってなんのこと?
  • なんで米ドルと香港ドルはペッグしているの?
  • ペッグ制はずっと続くの?
  • ペッグ制が廃止されるとどうなる?

そんな疑問に答えるべく、本記事で詳しく解説いたします。

サトル
記事の本題を読む前に、以下の文章をサラッと読んで頂くとスムーズです。
通貨のペッグ制とは?

自国の貨幣相場を他通貨と連動させることをペッグ制と呼びます。

経済基盤の弱い国・政情不安定な開発途上国の場合、自国の貨幣相場が不安定になりがちです。

そのため香港は、安定的な国際投資・経済活動の継続を目的として、政府や中央銀行が金利調節や為替介入を行い、米ドルとの為替レートを維持するドルペッグ制を採用しています。

このペッグ制を利用して利益を挙げるのが「香港ドル・米ドルのスワップポイントサヤ取り」です。単純にいうと以下のように利ザヤを得ます。

  • 売りスワップの低い「香港ドル」を売り
  • 買いスワップの高い「米ドル」を買う
  • 買いスワップ>売りスワップなので差分が利益となる

香港ドル・米ドルがペッグ制で保証されているため、為替レートを気にせず利益を挙げられるのがメリットです。

詳細はこちらもご覧ください。

【FX】米ドル・香港ドルでのスワップポイントのサヤ取り(アービトラージ)の始め方

2019年8月16日

スワップポイントのサヤ取りとは何ぞや?という方はこちら。

現在の香港は、犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案に反対するデモが過熱。

中国本土と一線を画してきた香港がいよいよ、歴史的局面を迎えています。

サトル
そこで、もし米ドルとのペッグ制が廃止されると、サヤ取りポジションはどうなるのか?まじめに考えてみました。
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【おさらい】香港ドルの特徴とサヤ取りの利益構造

香港ドルの特徴とサヤ取り手法についておさらいします。

以下記事に詳細を記載しているので、サラッと説明します。知っている方は読み飛ばしてしてください。

香港ドルと米ドルの関係

まずは香港ドルと米ドルの関係について。米ドル・香港ドルのペッグがいかなるものか、為替チャートをみるとよくわかります。

見事に7.75~7.85のレンジで上下していますね。

レンジから外れそうになると、香港政府や中央銀行が介入してレンジ内に戻しています。

スワップポイントのサヤ取りの利益構造

スワップポイントのサヤ取りは、普通は同じ通貨を別会社で両建てします。

別会社にする理由は、会社毎にスワップポイントが異なるからです。

こうすることで、為替変動で損をせず、スワップポイントの差額で利益を得るというズルい手法(笑)

一方、今回の手法は「香港ドル/円」・「米ドル/円」という異なる通貨ペアを両建てします。

さっきのチャートの通り、両通貨はレンジ相場(米ドルが上がれば香港ドルも同じ動き)が続いています。

サトル
そのため「香港ドルを売り・米ドルを買う」のを、同じ通貨を両建てするのと一緒って考えるわけ。

「米ドルのスワップ>香港ドルのスワップ」である限り、その差額が利益になります。

試しに見てみましょう。以下は各社のスワップポイント(2019/9/1時点)です。

ポジション保有の単位について

米ドル1万通貨に対し、香港ドルは7.8万通貨としています。

1米ドルに対し7.75~7.85香港ドルなので、その中間の7.8としているわけです。

会社 米ドル/円 香港ドル/円
買い スプレッド 売り スプレッド
みんなのFX 65 0.2 -54.6 1.8
LIGHT FX 65 0.2 -54.6 1.8
SBIFXトレード 62 0.29 -31.2 1.9
FXプライムbyGMO 53 1 -101.4 2

今だとSBI FXが有利ですね。

「米ドル/円を1万通貨買い・香港ドル/円を7.8万通貨売る」ことで、1日28.8円のスワップポイントが得られるわけです。

こんな感じで利益を挙げます。以上、おさらいでした。

香港はなぜ米ドルとペッグしているのか?

本題に入る前に、なぜ香港ドルは米ドルとペッグしているのか整理しましょう。

香港の歴史

香港は元々は中国の一部ですが、100年以上に渡ってイギリスの統治下にありました。その後、中国との返還交渉がなされイギリスからの統治は外れます。

しかし、中国と完全には一体化せず「一国二制度」と「香港基本法」の下で、中国の特別行政区として地方自治を行っています。

そのため、香港の通貨は「中国元」ではなく独自通貨「香港ドル」を使用しています。

米ドルとのペッグ開始には、1983年の「ブラックサタデー」という通貨危機が背景にあります。

当時、イギリスと中国の間で香港の返還交渉が行われていました。サッチャー英首相と鄧小平氏の交渉です。

鄧小平氏は香港の返還を強く要求する強硬姿勢を執り、最終的にサッチャー首相が折れる形となりました。

この交渉の過程で、香港の先行きの失望感が世界中に広がり、香港ドルが大暴落する「ブラックサタデー」が発生しました。

サトル
中国に主導権を握られるのはがっかりというのが、当時からの認識のようですね。
この混乱を収束させるため、香港当局は香港ドル相場を1米ドル=7.8香港ドルで連動させました。

これが、今も続くドルペッグ制の始まりです。

香港ドルの暴落を抑えるために、信頼性の高い米ドルとのペッグ制を始めたわけ。

参考:どうやって米ドルとペッグしているか?

香港ドルのドルペッグ制は、ペッグ制の中でもより強固な「カレンシーボード制」によって成り立っています。

「カレンシーボード制」とは、自国の通貨発行量に見合う米ドルを中央銀行が保有するという制度です。

香港ドル紙幣を発券する都度、その額面分の米ドルを用意する。これにより香港ドルは米ドルによる100%の裏付けがあるため、信用が保証されています。

その結果、1997年のアジア通貨危機や2008年のリーマンショック等、為替相場を脅かす危機が何度も発生しているにも関わらず、30年以上の長期に渡って固定相場を維持できています

香港ドル・米ドルのペッグ制は今後も続くのか

約10年前から、ことある毎に「ペッグ制をやめるのでは?」という憶測が出ています。

確かにペッグ制によって香港ドルは信頼を得ています。けど、ペッグ制の維持は香港にとってメリットばかりではありません。

ペッグ制のデメリット

香港で自由な金融政策が行えず、常に米国の金融政策に合わせる必要がある。

米国が利上げを行えば香港も行い、逆に利下げを行えばそれに従う等、常に米国の金融政策に付いて行くことになります。

例えば米国だけが利上げに踏み切った場合、金利の高い米ドルが一方的に買われてしまい、ペッグ制が維持できなくなってしまうね。
しかし、今や香港は中国と密接な関わりがあります。米国が景気が良い時に、香港も景気が良いとは言えません。

そんな中、米国に付き合って利上げ・利下げを行うことは香港経済にとってデメリットとなり得ます。

そのため、米国と中国間で何かある度にペッグ制の廃止が話題に上がるわけです。

ペッグ制の廃止はあり得るのか?という疑問に対してのサトルの考えは、

「将来に渡って廃止の可能性がないとは言えないが、当面はペッグ制を維持する」です。

 

今の香港を取り巻く環境は、以下の3つが大きいところ。

香港を取り巻く環境
  • 米中貿易摩擦の関係もあり、米中のゴタゴタが悪化
  • 中国への犯罪者引き渡し法案に反対するデモが激化
  • これに伴い、米国による香港への関税優遇を見直すという見方(米政府筋)あり

これらの展開次第で、香港経済が悪化し米国と金融政策の連動が難しくなる(ペッグ維持が困難)可能性はゼロではありません。

サトル
けど、だからと言ってペッグ制を本当に廃止するかは懐疑的。

ポイントは以下ですかね。

POINT

  • 米ドルとのペッグによって香港ドルの通貨価値を長年担保してきた。
    ペッグ制を廃止すると、香港経済は大混乱に陥るのでは?
  • 米ドルとのペッグ制を廃止すると、中国との経済的繋がりが強固になると思われる。
    今回の香港デモでわかるとおり、中国との連動は香港内で反発が多い。

また、現在米国は金融緩和(利下げ)の流れです。利下げは景気底上げ効果があります。

利下げであれば弱った香港経済にメリットがあるので、基本的に付いて行くんじゃないかなと思います。

ペッグ制が廃止されると為替相場はどうなる?

続いて、万が一にもペッグ制が廃止された場合どうなるか考えてみます。

結論から言うと、私の予測では「米ドル/香港ドル」のレートが上昇(香港ドルが下落)すると思っています。

「米ドル/香港ドル」の買いと同じなので、サヤ取りポジションは利益が発生すると考えます。

私がそう考える根拠はこちら。

サトルの予測の根拠
  • 世界の基軸通貨「米ドル」とのペッグを廃止することは、香港の信頼が損なわれ兼ねない。
  • ペッグ制廃止は中国との強固な繋がりを示唆するため、香港に対して失望感が増す。

実は過去、米ドルとのペッグ制を廃止した国(アルゼンチン)があります。

同国は1991年から米ドルとペッグしていましたが、2002年に廃止されました。

アルゼンチンのペッグ制廃止の原因

色々な事情が絡みますが、要するにアルゼンチン経済が悪化して、ペッグ制の維持が困難となったことが原因です。

経済が悪化すればその国の通貨価値は下落しますが、ペッグ制である限り米ドルに価値を合わせる必要があります。

その結果、アルゼンチンの通貨(ペソ)が実力以上に高くなり国際的な競争力が弱まり、ペッグ廃止へと繋がりました。、
こちらに詳細説明があります)

ペッグ制の廃止以降「米ドル/アルゼンチンペソ」のレートは以下のようになりました。

見てのとおり、ペッグ制廃止後は「米ドル/アルゼンチンペソ」が上昇。つまり、アルゼンチンペソが下落していますね。

2019年現在に至っては「1米ドル・55アルゼンチンペソ」とエラいことになってます。

もちろん、その時・その国特有の事情によって変わるため、香港ドルも同様になるかは断言できません。

ですが、長期に渡って維持したペッグ制を廃止するということは、よほどの事態があった場合かと。

その時、米ドルと香港ドルどちらが強いか考えると世界の基軸通貨である米ドルが強いと考えます。

まとめ

ちょっと評論めいた記事になってしまいました。

将来のことは未来人か超能力者?しかわかりません。だからと言って何も考えないで投資するのはギャンブルであり危険です。

サトル
ある程度自分で予測を立てて、納得感のある運用がしたいですね。
今回は米ドル・香港ドルのスワップポイントのサヤ取りについて予測を立てました。

読んで頂いた方の投資判断の一助になれば嬉しい限りです。

実際に開始するにあたっては、以下記事をしっかり読んで参考にしてください。

その他通貨のサヤ取りについても、私のオリジナル戦略を立てています。参考にどうぞ。

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2019年3月1日

では、また。

 

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